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株式会社金子建築_office
「暮らし」を体感し、街とつながる拠点
このプロジェクトは、単なる工務店のオフィス機能を満たすだけでなく、家づくりに対する思想と哲学を空間そのもので表現し、訪れる人々が未来の暮らしをリアルに「体感」できる新たなコミュニケーションのハブとなることを目的とした。
1. 街並みとの関係性を築く配置とファサード 北側の大通りに対し、敷地の間口を最大限に活かして建物を東西に長く配置。ガラスを多用した水平ラインを強調するファサードは、道行く人々の視線を自然に内部へと誘い、閉鎖的になりがちな事務所建築を「地域に開かれた存在」へと変えている。夜間には、内部の温かい光が漏れ出すことで行灯(あんどん)のように街を照らし、景観に貢献すると同時に、企業のアイデンティティを象徴する。
2. 内外を貫き、空間を繋ぐ「土間」 建物のコアとなるのが、外部から内部へと連続し、奥へと抜けていくコンクリートの「土間」である。この土間は、内外を緩やかにつなぎ、圧倒的な開放感と奥行きを生み出す。また、パブリックな展示・接客エリアと、セミプライベートな執務・打ち合わせエリアを緩やかに分節しながらも一体的に繋ぐ、空間の背骨としての役割を担っている。
3. 断面計画による空間構成 緩やかな片流れの屋根形状をそのまま内部空間に反映させ、高く、伸びやかな勾配天井を創出した。土間部分は天井高を最大化して開放感を演出し、一段上げたLDK空間は天井高を抑えることで、落ち着きと「籠り感」のあるヒューマンスケールな空間としている。このレベル差と天井高の変化は、ワンルームという一体感を保ちながらも、それぞれの場所に異なる性質を与え、空間を緩やかに分節している。
4. 「暮らしのスケール」を体感する機能の融合 設計の核として、住宅のLDKのスケール感を忠実に再現した。アイランドキッチンのようなカウンターや造作ソファ、薪ストーブ、住宅仕様の洗面台などを設えることで、クライアントは図面だけでは理解し得ない広さ・素材感・温熱環境を五感で体感できる。これにより、打ち合わせは「仕様を決める作業」から「未来の暮らしを共に創造する対話」へと昇華される。事務所機能とショールーム機能がシームレスに融合した、新しい形のプレゼンテーション空間である。
5. 温もりと陰影をデザインするマテリアルと光 天井や床、造作家具にはふんだんに無垢の木材を使用し、人が触れる空間に温もりと安らぎを与えた。これに対し、土間のコンクリートや薪ストーブのアイアンといった硬質な素材を対比的に用いることで、空間全体を引き締めている。照明計画においては、北側からの安定した自然光を昼光の主軸としつつ、夜間は間接照明や複数のペンダントライトによって温かみのある光の溜まりを点在させ、陰影のある豊かな空間を演出した。素材と光が響き合うことで、時間と共に表情を変える建築を目指した。
■所在地 群馬県伊勢崎市
■施工 株式会社金子建築